映画

映画「グリーン ブック」から見る人の思いやり、覚悟

多少ネタバレがあります。

あらすじ

イタリア系白人のトニー・リップがひょんなことから、黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーの演奏ツアーの運転手となり、そこで事件に見舞われながらも友情を育んでいく感動の物語になります。

そもそもグリーンブックとは

1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝された。

https://gaga.ne.jp/greenbook/about.html

要するに、この時代は黒人差別が強く、黒人が利用可能な施設が限られていたわけです。そのため、このようなガイドブックが必要ということです。グリーンさんの出版している本だからグリーンブックということですね。

この映画の見どころ

個人的にこの映画の見所は

  • パイオニアの孤独
  • 真逆の性質の二人がお互いを成長させる
  • 二人には共通点も多い

パイオニアの孤独と朝鮮

ドクター・シャーリーの差別階級に生まれた天才の孤独と、天才故に課せられた使命、そこから逃げず、常に戦い続ける姿勢がとても素晴らしい。

劇中に、車が故障して修理中にそのロードサイドの農場で、黒人の農民達が鍬のようなもので土を耕しているシーンがあるのですが、

そこで、お互い黒人でありながら良い身なりであるドクターと、貧しい農民達の視線が交差します。お互い何を思うのか。

良い身なりが白人であれば、時代的にはよくある風景であったでしょうが、同じ黒人なのにという非日常感が、嫉妬、哀れみなど様々な感情をより想起させる結果になったと思います。

また、そもそも、ドクターは既に大富豪で、北部にいれば南部ほど差別があからさまではないのに、なぜ南部の演奏ツアーに行くことにしたのか。

ここには、この理不尽な世の中を変える一歩を俺が記すという強い決意の気持ちが現れています。

そのため、VIPとして招かれたはずのレストランで、黒人であるがゆえに食事を断られた時に、なぜ私はここで食事ができないのか?とはっきりと主張をしています。

他にもトニーが一人で外出するなと言っても、何度も一人で外出してチャレンジをしています。

真逆の性質の二人がお互いを成長させる

本作はいわゆる
「バディームービー(主人公2人)×ロードムービー(旅行記)」
になるのですが、後述しますが、共鳴し合う性質があったため、お互いを助け合い、成長し合っています。

ドクターはトニーの手紙をロマンチックなものにして、やがてトニーは自分だけでそんな手紙を書くことができるようになりますし、

トニーはドクターに、ケンタッキーフライドチキンの素晴らしさを教えたりしています。

力と度胸でトニーがドクターをピンチから救ったり、
その力で牢屋に入れられてしまった時、ドクターの電話1本で釈放されたります。

二人の共通点は多い

二人は生涯友人として過ごしました。それはこの旅で強い絆が生まれたのですが、元々二人には共通点が多く、そして人間としての美徳が共通して備わっていたと思います。

意見をはっきりいう

身も蓋もない言い方をするトニーも、言葉は優雅ではあれど言いたいことを言う二人は、初めから腹を割って接していました。
8週間もこの調子一緒にいたら、トラブルは多いですが、お互いをわかり合うのには十分ですね。

特に劇中ではこのやり取りが、映画ならでは小気味いいの分量や間でで会話が進められていて、異なるバックボーンながら、会話が同じレベルでユーモラスに展開していきます。

他人について寛容、自分の良心に素直

ここはそもそもの人間力というか、相手を認めるところが共通してますね。

ドクターはトニーの発言に一定の魅力をみとめていますし、
トニーはドクターの注意を割と素直に受け入れます。

また、トニーはドクターの音楽を初めて聞いたときに感動をしていましたし、それもあり、とある街でピアノが”手違いで”指定のブランドではないものであった時、多少腕っぷしを使いでピアノを交換させます。

また、お互い結構素直にあやまったり、他人を気遣ったりするのも見ていてジーンときました。

教養がある

トニーはブラック・ユーモアや、デマカセでピンチを切り抜けていきます。警察署での賄賂のくだりは、「これは感謝の印の寄付だよ」といって本当に上手に言葉を使っています。一部方からはこのシーンは批判の対象になりそうだとは思いますが、この機転や語彙は、人生を生き抜くために大きな力になる教養だと言えます。

一方のドクターは、元々育ちもよく、ピアノの表現も手紙の語彙も美しい抽象化したり、皮肉も決して汚い言葉を使わない。
日本の文化人のような屹立した雰囲気を感じました。