ビジネス・仕事

【大企業の人が解説】ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか

こんにちはプラズマコイ(@purazumakoi)です(^^)

2018年から比べて、2年で株価が約4倍に上がったワークマン。
売上、利益も2倍に増えました。

ワークマン躍進の秘訣を、今も大企業でマーケターとして勤めている私が、
本の内容を要約、解説していきます。

結論から言うと、作業服を「カジュアルウェア」として売り出したからです。

結論:作業服を「カジュアルウェア」として売り出した

初めに答えです。シンプルに箇条書きでワークマンが売上を2倍にした理由を書きます。

  • ワークマンは職人の方向けに「作業服」を売っていた
  • 同じ商品を「アウトドア」「カジュアル」ウェアとして一般向けとして売り出した

いままでは職人さんだけがお客さんだったのに、
登山など山登りが趣味の人や、一般の家庭のカジュアルウェアとして、客層を広げることに成功したのです。

マーケティングの専門用語としては
「同じ商品を、違ったセグメントをターゲットとして売り出した」ということですね。

優秀なトップが必要

理由を解説するのは簡単ですが、
それを実施することはどの組織でも出来るわけではありません。

まず最も重要な要素は、優秀なトップが必要ということです。

ワークマンはもとから徹底したマニュアルを作り店舗運営をフランチャイズで実行できる力がありました。

そこから経営者が「客層拡大」を意識して行動したことが重要なことです。

2014年に策定した「中期業態変革ビジョン」
  1. 社員一人あたりの時価総額を小売企業でナンバーワンに
    (要は1人あたりの価値でナンバーワンになる)
  2. 新業態の開発
    1.「客層拡大」で新業態へ向かう
    2.「データ経営」で新業態を運営する準備をする
  3. 5年で社員年収を100万円ベースアップをする

社員の立場としては③の年収100万円のベースアップを掲げてくれると嬉しいですね(^^)

優秀な経営者もそうですが、優秀な社員に中々活躍の場が与えられないのが大企業の組織としての課題なので、そこを上手くクリアできたという所に”ワークマンを変えた男”「土屋哲雄」さんの手腕の凄さを感じます。

データ経営

個人的な本書「ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」の見どころとしては「データ経営」の章です。

全社員がエクセルの達人

大企業の課題として「デジタル人材が不足している」というのがあります。ワークマンが。アパレルウェア、アウトドアウェア、スポーツウェアと客層を増やすには、絶対に必要なスキルが「データ経営」でした。

データ分析のハードルは多い

一般的に、大企業の社員はとにかく無駄に忙しいです^^;
特に上場企業ですと、ベンチャー企業にはない「作業」が山のようにあります。

一例では以下となります。共感いただける方も多いのではないでしょうな^^;

  • 会議の時間が多い
  • 上司に相談、説得しないと物事を進められない(その上の上司もいる)
  • 定例の作業で基本的に業務は埋まっている
  • 業務を減らす事ができず、増やす一方

多くの社員はこのような状況のなかで、知見のない「データ分析」の考え方やスキルを身につけるのは非常に困難と言えるでしょう。

ワークマンは「アナログ」から「デジタル」へシフト

ワークマンの場合は”とにかく余計な事をやらない会社”なので、わざわざ無理してデータ分析をしなくても経験と実績からくる「勘ピュータ」で職人用の商品を売るだけなら、何とかなっていました。

しかし、客層や業態を拡張していく長期戦略を踏まえたら、商品コードの桁数など「基幹システム」の構造も大幅に変える必要があります。

システムは「構想1年、作って1年、使って8年」といいます。
非常に労力がかかるのですが、システムに投資が出来ない会社に未来はありません。

アナログな企業、アナログな人は、とにかく”今”ゴリ押しで何とかしようとします。
これを続けると、以下の事がブラック化してしまいます。

  • 社員の精神状態
  • 職場の空気
  • 長時間労働
  • 会社の業績

データや論理で考えて発言できるようなしくみを作る事が今後は必須と言えるのです。

【デジタル人材】データ分析を出来る社員を直営店で育成する

データ経営をするにはデータに強い「デジタル人材」が必要になります。

そこでワークマンは直営店を社員の「トレーニングストア」と位置づけ以下の目的で運用しています。

  • 売上など、業績は気にしない
  • 社員の能力が伸びているかどうか

ワークマンがデータを使える人材を重要視しているのが非常によく分かるエピソードです。

人は育成をしないと戦力にはなりません。


ワークマンの直営店は社員が社員として必要な「商品知識、お客さんとのコミュニケーション」を学ぶことは基本として、データ活用をして売り場を改善する事ができる人材を育てています

プラズマコイ

データは所詮ただの数字。
それを使うのは人なので、データを使うスキルを人が身に着けないといけません。

他にも本の中には、全社員向けの分析の研修をやっていて
・全社員が定型的な分析をマスター
・そこから異常値を見つける力
・次にどんな手を打てば良いのかを考える力
上記を全社員が身につけるようなしくみにしています。

だからワークマンには専門のデータサイエンティストは不要なのです。

10年かかることも社長が全面にでると2年で出来る

データを使って仕事をするのは、世のおじさま方が想像できない(だから簡単に言う)くらい大変な事です。

実際、本書でもワークマンの土屋氏は、10年計画であった事を明かしています。

データ経営は、すぐにはできないけど、5年、10年でやろう、ということになった

書籍より:「ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」

しかし、社長が全面に乗り出す(という風に見える)ことにより、2年で出来るようになったのです。

売価から決める、商品制作

ワークマンは新しい市場を発見した。いや発見したのではなく、実行したのである。

ワークマンは低価格で売るために「自分で物を作って、自分で売る」という商売に軸足を傾けました。

【小売業がプライベートブランド(PB)を持つのが流行】

昨今の大手の衣料品小売は、ユニクロ、ワークマンなどPBを持つ企業が躍進しています。

理由は単純で以下2つの事をできるからです

  • 大手メーカーが作って「売れたもの」を真似して、よりを低価格で作って売る
  • 大手メーカーの商品を参考に「かゆいところに手が届く」商品を自分たちで作って売る

「他より安い、他で売って無い」ものを作ることにより売上を伸ばす事ができるのです。

とにかく安く、ユニクロと競合しない

ワークマンの商品は最新カタログを見るととにかく安いです

ワークマンが1人勝ちできている理由が3つあります

  • どこよりも安い価格の商品
  • 低価格、高機能な商品
  • ユニクロと競合しない(ユニクロはファッションを安く売る)

まずアウトドア、カジュアル、作業着のアイテムとして、とにかく安いです。
ここで重要なのは「ファッション」カテゴリのアイテムを外している事です。

他社が、行きたくても行けなかった「ブルーオーシャン戦略」ですね。

プラズマコイ

ワークマンに対抗できる高機能、低価格を実現できる企業が今後でてくるのでしょうか?

出てこないうちはワークマンの独擅場ですね。

980円の軽量シューズ

ワークマンはものづくりを売価から決めます

この考え方には非常に共感できて、出せる値段は買う前から決まっているのです。

特に人は「安物買いの銭失い」ということわざからも、安いものに目がないのです。

そこでワークマンが生み出したのが(税込み)980円のカジュアルシューズの「アスレシューズ ライト」です。

https://workman.jp/より

カジュアルシューズとして設計したのですが、簡単なランニングやウォーキングにも使えると言うことで、一般の人にバカ売れした商品です。

どうしても、ものを作ろうとすると、高いものを作って、高く売ろうとしてしまいますが、980円であれば、色違いで買ったりして、結果的に売上は上がりますね。

1900円の厚底ウォーキングシューズ

980円「アスレシューズ ライト」では見た目もですが、
クッション性の問題など「履いていてつかれる」という一部不満の声もでてきました。

そこで満を持して開発したのが「アスレシューズ ハイバウンス」
履いていて疲れにくい、を実現するために以下の機能を有した
高反発ソール「バウンステック」を開発しました。

  • 高いクッション性
  • 歩きやすい高反発
  • 長い間履いても、へたってこない耐久性

あくまでウォーキング用のシューズということではあるが、
ジョギングなど、運動としてのランニングとしても十分用途になる仕上がりです。

https://workman.jp/より
プラズマコイ

普通にかっこいい!ランニングにも対応した流行りの厚底ウォーキング・ランニングシューズです!

特に最近ではナイキが作るランニングシューズでは「厚底」が大旋風を起こしていますから、その流れにのった商品としてこちらも売れました。

ファンの力を活かす

企業は通常、商品を売るために広告に莫大なお金を使用するものです。

しかしワークマンは売価が安く、商品1点あたりの利益が少ないので以下にお金を使わずに宣伝するのか?がキモとなってきます。

ワークマンに限らず、近年SNSマーケティング、インフルエンサーマーケティングという告知方法が人気なのも、お金がかからないからです。

ワークマン愛に溢れた人を捕まえて「身内にする」

ワークマンは商品が良いので、ワークマンを愛している人がいました。

広報の人はここに目をつけました、ワークマン愛を持っている人で、なおかつブログなどで発信している方とであればメリットは大きいです。

  • もっと良い商品が作れる
  • その人がインフルエンサーとして宣伝してくれる
  • インフルエンサーの人のブログの閲覧数もあがる

正にみんなが幸せになる「win-win」の状態の出来上がりです。

「ワークマンでもいい」→「ワークマンがいい」

こうして世間の人は、別に安いし結構使えるから「ワークマンでも別にいい」という気持ちから、
ワークマンって商品も良いしイケてる会社じゃん「ワークマンが良い!」という状態にブランド化していきました。

この流れはユニクロの状態と似ていますね。

通常、ワークマンなどのプライベートブランドは、
「別にこれでもいい」という位置から初めます。

例えばスポーツブランドであれば多くの人は、

ナイキ、アディダス、プーマ、ニューバランスが良いけど
お金が無いから目に見えない所はプライベートブランドで妥協をしているのです。

その状態から脱出して「ブランド化」できることは、大手ブランドに立場が並ぶ偉業と言えます。

大胆なマーケティング手法

広告費をかけずに宣伝する手法は他にもありました。

2018年12月14日にワークマンより以下のプレスリリースが発表されました。

「3月下旬か4月上旬に『WORKMAN Plus』の唯一の競合先であるフランスDecathlon社(売上1.3兆円)が大型店を阪急西宮ガーデンズに出店します。当社はこれに先立つ3月21日にららぽーと甲子園に『WORKMAN Plus』を出店し、同日に路面の大阪水無瀬店を『WORKMAN Plus』に改装してDecathlon社を迎え撃ちます。両SC店の距離はわずか3kmですが、先手必勝で大規模な販促を行います。2店舗だけではDecathlonの大型店にかなわないので、関西地区のワークマン120店舗でアウトドア売場を強化して包囲網を作ります。1対120の数の優位で『西宮戦争』を制するつもりです」

書籍より

これはデカトロンが日本に上陸してくるということで商品ラインナップから、本当は競合とは思ってなかったのですが、こうやって話題性をつくり、ワークマンの知名度、ブランド力を上げました。

ホワイト企業としてのワークマン経営

減点主義ではなく「加点主義」

ワークマンはたくさん売ったら「インセンティブ(報奨金)」を出すことを約束して、お店のモチベーションアップになるんですね。

ここでワークマンがすごいのは、減点主義ではなく、加点主義な所です。
減点主義と加点主義では、働く人からの見え方が全く違うんです。

プラズマコイ

多くの会社は「減点主義」が基本です。

会社が勝手に決めた「売上目標」を守れなかったら評価や給料が下がる。

これでは従業員のモチベーションがあがりません

ワークマンは、ノルマが無くて、頑張ったらその分が「ボーナス」となる仕組みなんです。

  • 減点主義・・・怒られないため、給料を下げられないために頑張る
  • 加点主義・・・褒められるため、給料を上げるために頑張る

どっちの方がやりがいに繋がるかは明白ですね(^^)これが加点主義の優れている所です。

多くの日本企業は「減点主義」を採用しています。
要は「ノルマを達成できなければ罰を与える」という考え方です。

減点主義の考え方は「正解は既に決まっている」という考え方で、学校のテストも減点主義ですね。

世の中の多くの物事は「ルール」という正解が決まっているものが多いですが、
自分の創意工夫で成果を上げる「加点主義」の考え方に着目することも、これからの時代には必要ですね。

ワークマンが変えた事

ワークマンは冒頭にもでてきました「中期業態変革ビジョン」を達成するために多くの事を変えてきました。

2014年に策定した「中期業態変革ビジョン」
  1. 社員一人あたりの時価総額を小売企業でナンバーワンに
    (要は1人あたりの価値でナンバーワンになる)
  2. 新業態の開発
    1.「客層拡大」で新業態へ向かう
    2.「データ経営」で新業態を運営する準備をする
  3. 5年で社員年収を100万円ベースアップをする

1.PB商品を作ることで「商品力」を向上

ワークマンは「運営力」→「商品力」へと軸足をシフトしました。

運営力とは、店舗の運営マニュアルを徹底化することです。
例えば、駐車場は10台、売り場は100坪といった、フォーマットを徹底化し、棚割りや並べる商品の標準化を行ってきました。

これは「チェーンストア」の基本で、どこのワークマンでも全く同じサービス、商品を並べることで、お客様の信頼を獲得することと、何より「本部の店舗管理が楽」というメリットがあります。

そこから、売上をあげるため、新たに「魅力的な商品」を開発することにしたのです。

2.「データ」を見て、やり方を変える

データ経営(データで見て判断をする)やり方を徹底できると良いことに、「前例踏襲の壁を破れる」ことがあります。

今も皆さんの会社にはびこる「前例踏襲」ありますよね。
前例踏襲は、過去に成果が上がってきた施策であったり、何より「慣れているから実施しやすい」というメリットがあります。

しかし、売上をあげるという「チャレンジをする場合」は新しい事をしなければいけません。

つまり「前例を踏襲していてはいけないのです」

その際、部長、課長といったベテランの言うことが正しい保証はどこにもありません。
若手や新卒の言うことも含めて、気付きを実験をしながらデータで判断していくことが必要なのです。

3.経営者が本気になる。それを社員に伝える

3つの中期業態変革ビジョンを実施することに、経営者が本気になることも重要であると書かれています。

  1. ウチの商品は良いんだというメッセージを伝えるため、土屋氏が毎日ワークマンを着用して出社した
  2. データ経営を徹底させるため、部長になる条件に「改革マインド」「データ活用力」の条件を加えた
  3. ベースの給料を5年間で100万円アップした。

特に3つめの「実際に給料のベースをアップした」のが社員には効きそうですね。

4.何かに特化して何かを捨てる

ワークマンは「トレードオフ経営」と銘打って、個人の頑張り(残業)に依存している経営から、残業をしなくても「勝てる仕組み」を作ることにしました。

経営者が良く使う「選択と集中」戦略の事ですね。

実際に大企業に勤めていて本当に思うのですが、これはすごく難しいことです。

プラズマコイ

今までやってた事を止めるのは、人間の心理上、最も難しい事です。

「売上をもっと上げたい」「新しい事をしたい」と思った時に、経営者、管理者は業務を増やします。
そして「業務を減らすことはしない」のです。

こうして生まれるのが残業とブラック労働です。

労働基準法で業務は1日に8時間と決められており、それを超える場合は「部下が無能だから」と考える管理者も珍しくありません。

ワークマンが変えなかった事

最後にワークマンが変えなかったことを紹介します

  1. 標準化経営・・・徹底化された店舗フォーマット、業務マニュアル
  2. ローコスト経営・・・安い商品で利益を出すために、コストは低くする。
  3. やらないことが決まっている経営
    「仕事が終わったら帰って休む」をモットーとしている企業文化のため、余計な飲み会をしない
    「一人ひとりに販促をかけないといけないようなニッチな商品を生産しない」
  4. 取引先、FCオーナーと長く付き合う・・・売上が上がったら、その人達も儲かるような仕組みにする

個人的に最も印象に残ったのは以下の文です。

販促費をかけてOne to Oneマーケティングをしないと売れないような商品はそもそも生産しない

本書、259ページより

近年のマーケティングでは、必要な情報を必要な人だけに、細かく送れることが理想となっているのですが、
その1人にしか刺さらない商品ってあんまり良い商品じゃないんですよね。

成果を出している企業は、他と違った経営をしていますね。

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