こんにちは、プラズマコイです。
今日は、森見登美彦さんの「熱帯」を読みましたので。そちらのレビューをしていきたいと思います。
この森見登美彦さんの本を一言で表することは難しいですが、
今回もなかなか文学の奥深さを感じさせてくれる一冊でした。
はじめに、森見登美彦さんの作風について
森見登美彦さんといえば、僕が他に読んだ事があるのは、『夜は短し歩けよ乙女』(よるはみじかしあるけよおとめ)と、『走れメロス』ですが、文体や世界観はかなり踏襲されていて、いわゆる森見登美彦節は本作でも健在です。
それゆえに、万人に読みやすいかというと、好みが分かれると思います。
対象としては普段小説を読んだり、純文学などの文学好きの方ですね。
今から読もうか迷っている方は、前述の『夜は短し歩けよ乙女』を読んでみて、これが好きならば次に『熱帯』を手にしてみてはいかがかと思います。
『熱帯』のあらすじ
汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。
amazonの内容紹介より
この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは?
秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。
幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!
我ながら呆れるような怪作である――森見登美彦
ということで、初見では、何が何やらということですが大まかな流れとしては以下になります。
※ちょっと内容の理解が足りて無いかもしれませんが
大まかな流れ(多少ネタバレっぽい部分有り)
一読しただけだと、シーンの移り変わりについて行けないかもしれません。ここが、好みの分かれるポイントですね。
- 森見登美彦の今(著者の生活)そして、沈黙読書会へ
- 「熱帯」という小説を探しながら、それぞれの記憶から「熱帯」を書き起こす話
- 「熱帯」という小説の中へ、めくるめく冒険
- 「熱帯」という小説の数奇な運命の解説。
第四章から一気に展開が変わるのには理由が
第四章から、熱帯の中に入り込むのですが、ここで何かいきなり感というか無理矢理感を感じる部分もあります、先程シーンの移り変わりについていけないと書いた所ですね。それにも理由を見つけました。何故か?
理由は、第三章までは過去に連載されていて、2011年で一度中断されています→
7年も経てば、多少、違う森見登美彦さんになっていて、色々な発想の材料も変わってくるので、こういった構成になるのも納得がいきます。
それゆえに、辻褄合わせにかなり苦労したそうです。辻褄合わせは苦しい作業でしたでしょうね。
『熱帯』の魅力
熱帯の魅力はやはり森見登美彦さんの文体ですね。
日本の古典めかした言い回しや、おなじみの京都の風景や大文字山(だいもんじやま)を想像させるシーンなどファンには、森見登美彦作品を読んでいる!という感傷に浸れます。
独特なシュール且つ軽快なやりとりも森見作品の特徴ですね。
今回はその他に、著者の小説家としての挑戦(オマージュ要素)を感じられます。
次回作に期待の部分も
今回は、執筆の時間が7年空いたことと、挑戦の部分があることから、作品のまとまりを欠く部分もあったりで、読み物としての没入感としてはそこまで無い作品になっているかと思います。
それゆえに、森見登美彦作品への入門としては、前述した『夜は短し歩けよ乙女』をおすすめします。
名著の引用、オマージュが満載
山月記、千一夜物語、ロビンソン・クルーソーなど、様々な冒険物、ファンタジー物が登場する本作、それらはただ文中で触れられるだけではなく、それらのエッセンスが本書はにも多量に含まれていることもわかる。
『熱帯』とは◯◯だ!ということは中々難しいが、少なくとも上記の3つの物語の要素を森見登美彦さんが編集して物語を紡ぎ出したらこうなったという意味では納得感が高いというのが僕の個人的な感想です。
特に、千一夜物語は内容も含めて多く登場してくるので、とても興味が湧いてきます。
参照
- 飴色のカードボックスというものが出てきます。飴色とは→
- 「大遠征になりすぎて戻ってこられないかと思いました」とのこと。読了後、これは納得しました(笑)
- 本書の冒頭に、著者の現状みたいなのが描かれていて、それについての背景が触れてられています。
以上です。今回もありがとうございました。